スローな死にしてくれ

北海道安楽死事件のその後に思う


 (以下はあくまでも高齢者に限っての話である.話を複雑にしないために)

 どんなに高齢でも,脳死状態でも,意識回復の見込みがなくても,もって長くて数日~1週間でも,パチンと呼吸器のスイッチを切ると,書類送検される可能性がある.

 ADLにもよるが,90才という高齢者の心肺停止でも,救急搬送されたら蘇生処置をせざるを得ない.家族は必ずしも蘇生を望んで救急要請してるのではなく,単に急変して気が動転しているだけ,ということが少なくない.なぜなら,20-30分のCPRの後,処置室で死亡確認となった場合,比較的すんなり(死を)受け入れられることが多いからだ.

 高齢者の心肺停止患者を蘇生した場合の典型的なパターンは,
    心拍再開
  → 呼吸器装着(しかし脳死状態)
  → 家族会議
  → 「もう充分やっていただきました.後は自然に」=DNR
  → 数日後に死亡
 最初は集まっていた親族一同も徐々に足が遠のき,5-6日もすると「先生,(最期は)いつ頃になりそうでしょうか」「ずっと付き添わないといけませんか」「帰りますので,その時(最期)は呼んでください」
 ...だったら最初からDNRにしといてくれよ,と思うのは医療関係者だからである.一般の人は,こういう現実を,当事者になるまで知らないのだ.

 こうして,輸液は減らし,検査もせず,ただ呼吸器だけが心臓が止まるまで(死亡確認してスイッチを切るまで)せっせと動くという状態になる.つまり,パチンとは切らないが,徐々に蘇生を中止するというのがほとんどの病院で行われていることであり,それが問題になることは今後もないだろう.

 今回の事件で学べることは,即~数分単位で死に至る撤退は不可(でも,数日かけて治療撤退するならOK)ってこと.つまり,スローな死にしてくれ,と.
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by E_physician | 2005-07-19 23:00 | 医学・医療一般


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