「震える舌」

 長いこと,もう一度観たいと思っていた作品だ.マイナーなのと(子どもの頃に観た人の多くがトラウマになる映画としては,ある意味 有名だが),古いのとで,レンタルビデオ屋にはまず置いてない.それがやっと6/14深夜 読売系で放映された.

 1980年の作品で,予告編CMのあまりの怖さ(キャッチコピー “その日 娘は悪魔と旅に出た”)にオカルト映画だと思いこむ人は少なくなかったらしく,私もそうだった.中学生くらいになり,TV放映を観て,なーんだ恐怖映画じゃなかったんだ,と誤解が解けた.しかし,映像は当時としてはかなりショッキングだった.その影響で,しばらくは泥とか砂に少しでも触れると神経質に手を洗ったものだ.

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↑ 後弓反張


 20年以上前の作品だから現在とは医療レベルもだいぶ違うとは言え,いくら何でも医学的に?という部分も少なくない.
・この児は痙攣すると,なぜかいつも舌を噛んでしまう.舌を噛んだ状態で「ウギャーーーーッ」とか「また舌噛んじゃったよーーーっ」とか声が出るのが不思議だ.さらに,口が血だらけの児に処置を行う医師達はいつも素手...これは時代背景としてしょうがないかなぁ.Standard Precautionsなんて概念はなかっただろうし.
・一番印象的なのは,痙攣で歯を食いしばる児の口を開けるために医師が「この子の前歯 乳歯?それとも永久歯? 乳歯だろ? 生えてくるからいいよね」と前歯をへし折って開口器を挿入するシーン.
・痙攣があまりに頻回だから気管切開を...(何でいきなり気管切開なんだ?と思ったら)気切の準備をしている外科医たちに対し, 主治医「気管切開は中止にします.教授が,この上さらに刺激を与えるとよくないって」 外科医「で,どうするの」 主治医「酸素テントを使います」 外科医「じゃあ始めからそうすりゃいいんだ」 ...(そりゃそうだ).で,酸素テントってのが,要するに気管挿管して挿管チューブは開放し(呼吸器にはつながず),酸素テントをかぶせる,っていう不思議な代物...この時代はこうだったんだろうか.そもそも,もっと早く挿管しとけば歯を折らずにすんだだろうに...

 それにしても,頻回の痙攣,後弓反張を演ずる児もなかなかだが,看病疲れで精神に異常を来してくる母親を演じる十朱幸代の熱演は見事である.その他の出演者も渡瀬恒彦,宇野重吉,中野良子,蟹江敬三,北林谷栄,・・・と豪華キャスト.

 この映画では児が予防接種してたかどうかについては触れられないが,これを観れば予防接種って大事だなぁとつくづく思える.世の“予防接種アレルギー”の親御さん方にはぜひ観てもらいたい作品である.ちなみに,私は大人になってからも破傷風トキソイドは予防的に打っている.

 参考:破傷風
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by E_physician | 2005-06-18 01:23 | 医学・医療一般


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